FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

黄色い雨/フリオ・リャマサーレス

黄色い雨

黄色い雨

 これは死と滅亡の物語である。
 田舎の貧しい村からどんどん人が離れていき、やがて最後の一人となった男(と彼の飼い犬)が飢えと孤独に苛まれた揚句、死を迎える話だ。おそらく別の書き手が紡いだならば、読後に胃が痛くなるような殺伐とした小説になるのだろうが、詩人としての側面を持つこの作家が著すと、その独特の改行のリズムも併せ、静かで特異な美しさすら醸し出している。
 アイニューリェ村、住民すべてが一人ずつ離れていき、いまや主人公と彼の飼う雌犬のみが残っている廃村。家族はない。主人公の子供達のあるものは病死し、別のものはおそらく戦死し、また別のものは村と家族を捨てて出て行った。妻は淋しさのあまり自殺した。主人公と雌犬はどうにか露命を繋いでいる。だがこの一人と一匹の間にも、死の影は迫っていた。
 圧倒するような倦怠感に包まれた、滅亡の物語。
 作者はスペインの作家。弁護士として世に出て、ジャーナリストに転身、それから詩人、小説家への道を歩んだとのこと。