黄色い雨/フリオ・リャマサーレス
- 作者: フリオ・リャマサーレス,木村榮一
- 出版社/メーカー: ウイーヴ
- 発売日: 2005/09
- メディア: 単行本
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これは死と滅亡の物語である。
田舎の貧しい村からどんどん人が離れていき、やがて最後の一人となった男(と彼の飼い犬)が飢えと孤独に苛まれた揚句、死を迎える話だ。おそらく別の書き手が紡いだならば、読後に胃が痛くなるような殺伐とした小説になるのだろうが、詩人としての側面を持つこの作家が著すと、その独特の改行のリズムも併せ、静かで特異な美しさすら醸し出している。
アイニューリェ村、住民すべてが一人ずつ離れていき、いまや主人公と彼の飼う雌犬のみが残っている廃村。家族はない。主人公の子供達のあるものは病死し、別のものはおそらく戦死し、また別のものは村と家族を捨てて出て行った。妻は淋しさのあまり自殺した。主人公と雌犬はどうにか露命を繋いでいる。だがこの一人と一匹の間にも、死の影は迫っていた。
圧倒するような倦怠感に包まれた、滅亡の物語。
作者はスペインの作家。弁護士として世に出て、ジャーナリストに転身、それから詩人、小説家への道を歩んだとのこと。