第三の女/アガサ・クリスティー
- 作者: アガサ・クリスティー,小尾扶佐
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2004/08/18
- メディア: 文庫
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クリスティー晩年の作品にしばしば見られる、「なにが謎なのかがなかなか分からない」作品である。ある娘が、ポワロの元を訪れた。どうも落ち着きのないこの娘、どうやら自分が犯したらしい殺人について相談に来たようだ。だがポワロが年寄りだと理由(むろんポワロは憤慨)で、さっさと帰ってしまった。
娘の名前はノーマ。実業家の大物レスタリックの実子だ。レスタリックは彼女が幼いときに、妻子を捨てて家を出た。近頃、ある女性を妻として伴い、ノーマの前に現れたが、父と娘、そして継母と娘の関係はうまくいっていない。それにどうも、ノーマは精神的な安定を欠いているようだ。彼女は本当に人殺しなのか。彼女の周囲で殺人など起きた様子は見当たらないのに。
傑作秀作の多いクリスティーの作品群の中で、お世辞にも出来がいいとは言えないながら、不安定な心の娘を中心に据えた、曖昧模糊とした作品の雰囲気は魅力的。ちなみに結末はやや脱力もの、ことによったら怒り出す人もいるかも。