FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

災厄の紳士/D・M・ディヴァイン

災厄の紳士 (創元推理文庫)

災厄の紳士 (創元推理文庫)

 こういう作品を読むと、「翻訳ものの本格ミステリっていい」と素直に思う。うさんくさい人間ばかり(特に男性達)が出てくるので、最後までサスペンスが持続するし、最後に明かされる真犯人も妥当。
 魅惑的だが、勤労意欲に欠けるネヴィルにとってジゴロは天職だった。彼の狙いはかつてのベストセラー作家ヴァランスの次女アルマ。美しく気の強いアルマは強敵だったが、幼馴染みにして婚約者ハリーに捨てられたばかりという弱みがあったし、彼にはアルマの篭絡を後押ししてくれる力強い共犯者がいた。アルマの姉、聡明で気丈なサラは、ネヴィルに警戒の目を向ける。
 やがて人が死に、そしてネヴィルは行方不明となる。
 犯罪サスペンス風に幕が上がり、本格ミステリとしてその幕を下している秀作。著者はその時代に活躍していないにも関わらず、解説で鳥飼否宇が言うところの「英国黄金期」のミステリが持つ香気が漂っている。『悪魔はすぐそこに』ほど図抜けた作品ではないが、D・M・ディヴァインの魅力を十分に知らしめることのできる一冊。
 発表されたときの名義は『ウォリス家の殺人』と同じくドミニク・デイヴァィン。こちらの名義の作品も、もっとどんどんと翻訳してもらいたい。

悪魔はすぐそこに (創元推理文庫)

悪魔はすぐそこに (創元推理文庫)

ウォリス家の殺人 (創元推理文庫)

ウォリス家の殺人 (創元推理文庫)

↑ディヴァインはこの二冊もいいよ!