花と流れ星／道尾秀介

花と流れ星

　『真備霊現象探求所』の三羽烏、真備庄介と道尾秀介、北見凛の活躍を綴った短編集である。「流れ星のつくり方」、「モルグ街の奇跡」、「オディ＆デコ」、「箱の中の隼」、「花と氷」の五編が収録されている。どれも粒揃いで、この作家の従来のファンも、そして「道尾秀介を始めて読む」という人間にも勧められる。
　道尾秀介はずっと読み続けていきて、このところ正直に言えばマンネリズムを感じ出していたのだが、軽やかでありつつもしっかりとしたミステリマインドを忘れない芸達者ぶりには改めて感服。
　一番早く雑誌に掲載された、という事情を抜きとしても、「流れ星のつくり方」を巻頭に持ってきたのは正解だと思う。最後の台詞でぴたりと決まる、一挙にそれまでの謎が解ける、そしてなんとも言えない感情が込み上げてくる。これは実にいいミステリ。
　続いて手首消失の謎を解く「モルグ街の奇跡」。ある人間の狂気の描写がおぞましい。マジシャンという職業が効いている。小学生の少女達と猫を巡る「オディ＆デコ」、新興宗教の団体を舞台とした「箱の中の隼」、孫娘を失った老人を描いた「花と氷」、どれもがミステリとしての面白さと、そして物語性が両立している。しかも悲劇を書いてもべっとりと重くならない。
　『龍神の雨』でややこけた観がある筆者だが、これはいい。おそらく今年読んだミステリの短編小説集としてはベスト。むろん、これより面白いものが出てきたならば、嬉しい。
　面白かった！

龍神の雨