おさがしの本は/門井慶喜
- 作者: 門井慶喜
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/07/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- クリック: 13回
- この商品を含むブログ (45件) を見る
犯罪が出てこなくとも、ミステリ小説は成立する。かといって、内容が「日常の謎」というわけでもない。テーマは本探し。それも失われた久しい幻の本やら、呪いがかかっているかもしれないうさんくさい本やらは出て来ず、おそらく実在するであろう(だよね?)書物が扱われている。
市立図書館のレファレンスカウンターに勤める主人公の元に、「本を探してほしいという依頼、あるいは命令がやってくる→主人公達が数少ないヒントを元に、正しい本を捜し出す」というだけの短編集なのだが、これが不思議と面白い。きちんとミステリになっている。筆者に小説家としての地力があるのだろう。下手な作家がやったら、ただの知識自慢で目も当てられない。
ベストは「図書館滅ぶべし」。やたらと難解そうな問いに対し、用意されていた答え……この落差、笑いながらもついつい納得してしまうものである。うちの近所の図書館にはもっとあるぞ。
ディレッタンティズムが鼻につかないわけでもないが、やはりこの個性は稀有。
特異にして、そしてミステリファンには楽しい一冊。