FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

パラドックス実践 雄弁学園の教師たち/門井慶喜

パラドックス実践 雄弁学園の教師たち

パラドックス実践 雄弁学園の教師たち

 うまいことを言った奴の勝ち。
 というと、なにかが違うかもしれない。論理的思考と雄弁を駆使して、与えられた問いに、質問者が納得する答えを弾き出すことが重んじられる(周囲の人間と、そして読者とをうまく言いくるめて納得させねばならない本格ミステリそのものだ)、特異な校風の雄弁学園での物語である。
 『おさがしの本は』とこの作品しか筆者の本を読んだことがないので、こんなことを言うのがおこがましいのだが、「犯罪は出てこない本格ミステリ」と「その場における権力闘争」を書くのが得意な作家なのだろうか。
 最初は謎解きが重んじられているのに、どんどんと学園を巡る陰謀に重きが置かれるようになっていくので、読んでいてちょっと淋しい。ひょっとして、最初は連作短編集にするつもりがなかったんだろうか?
 「え、そんな身近な答えでいいの」と驚愕の表題作「パラドックス実践」がもっとも出来がいい。第六二回日本推理作家協会賞短編部門にノミネートされていると知り、納得。
 どうでもいいが、とかく弁の立たない当方としては、この学園に通うことすらままならないかと思われる。

おさがしの本は

おさがしの本は