FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

花窗玻璃 シャガールの黙示/深水黎一郎

花窗玻璃 シャガールの黙示 (講談社ノベルス)

花窗玻璃 シャガールの黙示 (講談社ノベルス)

 安定した、高い質を誇るミステリ。神泉寺瞬一郎シリーズの第三作。彼が海外に遊学していた時代に出くわした事件を扱っており、舞台はフランスの街ランスである。この街の大聖堂は、シャガールの花窗玻璃(ステンドグラス)が美しい。やがてこの大聖堂に、死体が二つ転がる。
 島田荘司を連想させられる無茶で壮大なトリックと、早くもマンネリズムを感じ始めた動機を併せ持つ一作。そう、トリックは壮大で無茶、動機は生臭い上にありがちなものだが、このシリーズ、不思議と優等生風にまとまっており、けなす言葉がそれほど出てこない。優等生風というのは美点と欠点の双方を含む表現だが、このまとまりの良さ、そしてあまり読者を待たせないところは、現代日本においてはかえって稀有な存在かもしれない。