花窗玻璃 シャガールの黙示/深水黎一郎
- 作者: 深水黎一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/09/08
- メディア: 単行本
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安定した、高い質を誇るミステリ。神泉寺瞬一郎シリーズの第三作。彼が海外に遊学していた時代に出くわした事件を扱っており、舞台はフランスの街ランスである。この街の大聖堂は、シャガールの花窗玻璃(ステンドグラス)が美しい。やがてこの大聖堂に、死体が二つ転がる。
島田荘司を連想させられる無茶で壮大なトリックと、早くもマンネリズムを感じ始めた動機を併せ持つ一作。そう、トリックは壮大で無茶、動機は生臭い上にありがちなものだが、このシリーズ、不思議と優等生風にまとまっており、けなす言葉がそれほど出てこない。優等生風というのは美点と欠点の双方を含む表現だが、このまとまりの良さ、そしてあまり読者を待たせないところは、現代日本においてはかえって稀有な存在かもしれない。