FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

人形霊/チョン・ヨンギ監督

人形霊 [DVD]

人形霊 [DVD]

 マイミクの青猫さんを通して知った映画(ありがとうございます)
 韓国製のホラー映画とは合わないことも多いのだが、これは数少ない、嬉しい例外だった。
 森の奥の西洋館。人形を飾る美術館でもあるその館に、人形のモデルとして五人の男女が集められた。飾られた人形の美しさに魅了される招待客。だが彼らは、地下室に一人の男が幽閉されていることも、これから身の毛もよだつような怪異に襲われることも知らなかった。無数の人形が飾られた屋敷で、彼らは一人、また一人と惨殺されていく。ヒロイン、彫刻家のヘミは館に出現する愛くるしい少女を見、自分の失われていた幼児期の記憶を取り戻す。
 深い森の奥に佇む西洋館、常に黒衣に身を包み、車椅子を操る館の女主人たる人形師、地下室の囚人、過去に起きた殺人事件、そして呪われた器物(この場合は人形)、そして人形が人間を熱愛するという歪んだ恋愛……と一昔前の少女漫画風、ゴシックホラー映画の王道を行く作品である。
 特筆するべきは、タイトルともなっているお人形。大きなホールに飾られている人形はやや安っぽく落胆したが、その代わり招待客にあてがわれた客室に存在する人形が凄い。ほとんど等身大の彼女達は鏡を抱えていたり、天井から逆さ吊りになって掌に電球を包んでいたりする(むろん客はその鏡、その電球を使用できる)。しかもトイレまで……。怖い、怖い、実に怖い。なにかオカルト絡みの惨劇が全く起こらないとしても、宿泊するにはとても勇気がいるであろう館だった。
 ゴシックホラー、ちょっとした謎解き、そして韓流のいくらか暑苦しい人間ドラマのすべてを併せ持つ秀作。