矢上教授の午後/森谷明子
- 作者: 森谷明子
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2009/07/10
- メディア: 単行本
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『七姫幻想』以来、この作者の本を読む。あちらも傑作だが、この『矢上教授の午後』もなかなか面白かった。帯には「英国伝統ミステリのコクとユーモアがたっぷり」とあるが、このゆっくりとした展開、どこかすっとぼけた雰囲気、底に潜んだ毒気は確かに英国伝統ミステリを思わせる。当方が思い浮かべたのは、マイクル・イネスだった。
生物総合学部において日本古典文学を教える、白髪白髯の非常勤講師、通称、矢上教授。ミステリマニアである彼は、ミステリ小説の蒐集魔である。夏季休暇期間、雨や停電のために古い校舎が閉ざされ、矢上教授を含め中から人が出られなくなった。困惑する大学関係者の前に、大学関係者ではない正体不明の男の死体が現れる。それぞれになにか秘密を抱えているらしい関係者達の思惑、矢上教授の謎に対する調査、さらになんらかの目的を抱えて大学を訪ねてきて、そのまま閉じ込められてしまったものたちの行動……これらが絡み合い、サスペンスフルな空気を醸し出している。
上品でありながら苦味も効いており、なかなか好ましいミステリだった。
- 作者: 森谷明子
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2009/01/14
- メディア: 文庫
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