視覚の魔術 だまし絵 その2
幾つも面白い絵はあったけれど、多分もっとも凄かったのは、パトリック・ヒューズ『水の都』だろう。人がしきりに声を上げている一角があったので、変に思っていたけれど、近づいてみて分かった。
特殊な立体画で、絵の前を通り過ぎた瞬間、絵画の中の水の都が動き、風景が変わる。そういうように見える。小学生が奇声を上げながら行ったり来たりしながら跳ねていたが、私も見た瞬間声を上げ、跳ねはしないまでも、行ったり来たりしながら、何度も絵を見直した。老いも若きもそうしていた。
あまりにも巧みに絵の中の風景が動く(そのように見える)一瞬これは映像かと思ったが、違う。カンバスの表面から台形が三つ飛び出していて、そこも含めて水辺の都市が描かれている。その立体性ゆえ、角度によって見える風景が異なってくるらしい。見るものに酩酊感を与えるほど、奇妙な絵画だった。
この展示会の目玉の一つだ。こればかりは図版ではなくて実際に見てみないと迫力が分からない。
パトリック・ヒューズの公式ホームページはこちら
http://www.patrickhughes.co.uk/
他のだまし絵も素晴らしかったが、このパトリック・ヒューズ『水の都』一つだけでも、この展示会が行われた意義がある。