FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ペニーフット・ホテル受難の日/ケイト・キングズバリー

ペニーフット・ホテル受難の日 (創元推理文庫)

ペニーフット・ホテル受難の日 (創元推理文庫)

 一九〇六年、イギリス南東部沿岸の小さな村バジャーマズ・エンド。ここに上流階級御用達のホテル、ペニーフット・ホテルがある。女主人は夫に先立たれたセシリー、支配人はそのセシリーに献身的に仕えるバクスターだ。
 この優雅なホテルで、ある日とんでもない事件が起きた。ホテル主催の仮装舞踏会の直前、宿泊客の一人が屋上から墜死したのだ。そしてショーのために用意されたニシキヘビが逃げ出し、混乱に拍車をかける。
 雰囲気は悪くない……雰囲気は。問題はミステリ部分だ。いかなコージー・ミステリと言えども、この謎解きはないのでは。「あまりにもありふれているから、この真相はないな」と思わず考えてしまうような真相で、語られた途端、それまで話自体は面白かっただけにがっくりした。エドワード朝の優雅なホテル、健気な女主人と騎士道風の愛情を捧げる支配人、仮装舞踏会とそこで起きる殺人事件と、美味しい調味料が揃っているにも関わらず、メインの素材であるミステリ部分で出来栄えを大きく損なってしまった印象あり。
 ミステリ部分をもう少し頑張れ。