いにしえの婚約指南/キャスリン・カスキー
- 作者: キャスリン・カスキー,旦紀子
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2008/09/20
- メディア: 文庫
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十九世紀、英国。ロンドンの社交界へのデビューを控え、美貌の淑女エリザは憂鬱な気分でいっぱいになっていた。恋愛にも結婚にも興味がない。画才に恵まれたエリザの夢はただ一つ、イタリアで絵描きになるための修業を積むこと。このシーズンが無事に終われば、さっさとイタリアに向かうつもりだ。
一方、同じときに同じように溜息をついているハンサムな紳士マグナスがいた。彼はサマトン卿と呼ばれる伯爵家の当主。兄の死により爵位を継いだのだが、その爵位には兄が作った巨額の借金がセットになっていた。家屋敷や領地を、一族を、我が身を守るため、このシーズンに金持ち娘を掴まえて、借金の清算をしなければ身の破滅だ。
偶然出会った二人。エリザはマグナスに恋人のふりをしてくれるよう頼む。お約束の展開として本当に惹かれ合う二人だが、マグナスの経済的な危機は刻一刻と迫りつつある(エリザにはお金銭がない)。マグナスには、亡き兄の婚約者、大金持ちのキャロラインが迫る。エリザには、双子の大おばが『エンゲージメントのルール』と書かれた指南書を片手にとんちんかんなアドバイスを矢継ぎ早に送る。なぜとんちんかんかと言えば、その指南書はエンゲージメントはエンゲージメントでも、婚約ではなく交戦のためのルールが書かれたもの(つまりは軍人用の戦争マニュアル)で「鳥が驚いて飛び立ったときには、不意討ちに注意せよ」だとか、「不意討ちによって状況を立てなおす」だとか、物騒な言葉に満ちたものだった。
軽妙な恋愛喜劇。完璧な王子様よりも、こういったどこか人間臭いヒーローの方が好きだ。のちのジョージ四世、摂政皇太子とその母シャーロット王妃が脇役で出てくる。摂政皇太子の登場場面はわずかながら、そのわずかな場面で効果的に嫌な奴として描かれており、かすかに笑いを誘う。
そこそこ面白かった。