FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

冷たい月/サンドラ・パーシャル

冷たい月 (ランダムハウス講談社文庫)

冷たい月 (ランダムハウス講談社文庫)

 「冷たい月 サンドラ・パーシャル」で検索しても、Googleで828件しかヒットしないのが惜しい。自分も見逃していたので恥ずかしいが、これはよく出来た心理サスペンスである。
 レイチェルは二十六歳の獣医。精神分析医の母ジュディスや、心理学を大学院で学ぶ妹ミッシェルと暮らしている。ある日、レイチェルは自分の勤めるクリニックで泣いている幼い少女を目にし、記憶の中でなにかが蠢くのを感じる。ジュディスはほとんど亡き父のことを口にしない。そしてレイチェル自身もほとんど父の記憶がない。かつてレイチェルが父の死にあまりにショックを受けたとき、ジュディスが催眠療法を施し、父親に関わる彼女の記憶を封印してしまったからだ。
 レイチェルは少女を見たことと、クリニックの若き院長ルークとの交際を契機に、自分の過去と対峙することを決意する。そしてそれはジュディスや、母を心から敬慕するミッシェルとの対立を意味していた。レイチェルは自分の記憶を、そして母の過去を追い求める。
 辿り着いた結論はありふれたものかもしれないが、そこに至るまでの道程がいい。小さなツイストがところどころで効いており、頭の中に幾つもの?マークが飛ぶことが必至。ラストのヒロインの決意にも心打たれる。
 サンドラ・パーシャルは、この作品が初の長編サスペンスとのこと。またこの著者のサスペンス作品が日本で出版されたら購入すると決意。これはお勧めの一冊。