FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

警視の秘密/デボラ・クロンビー

警視の秘密 (講談社文庫)

警視の秘密 (講談社文庫)

 ダンカン・キンケイド警視&ジェマ・ジェイムズ巡査部長のシリーズ、第三作目。美しい風景の村、名門に隠された過去の悲劇、入り組んだ人間関係と、英国ミステリ好きにはたまらない、お楽しみが満載の一冊。
 高名な指揮者とその妻であるオペラ歌手の間に生まれた少年マシュー。彼はどこにでもいる少年だった、並外れた歌唱力を除いて。将来を嘱望されていた彼の人生は十二年で終わりを告げた。彼が水死したとき、傍らには姉ジュリアだけがいた。
 やがて年月は過ぎ去る。スコットランド・ヤードに勤務するダンカンとジェマは単純な事故だったはずの事件に駆り出され、首を傾げた。コナーという男性が水死した事件だ。彼の妻は、画家となったジュリアだった。
 ダンカンはふらふらしすぎである。いかに魅惑的とは言え、容疑者かもしれない女性に、こんな簡単に心惹かれていいのか。謎の解明にはやや頼りないものがある(あの人が犯人なら、他の誰だって別にいい)が、悲劇として面白かった。