FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

泣くのは、あとにして/ジョイ・フィールディング

泣くのは、あとにして (文春文庫)

泣くのは、あとにして (文春文庫)

 ジョイ・フィールディングは女性の細やかな心理描写を得意とする、サスペンス作家。メアリ・H・クラークと同じ系統の作風ではあるが、どこかハーレクインロマンス風味のクラークと違い、フィールディングはずっとリアルである。初期に訳された『優しすぎて、怖い』、『秘密なら、言わないで』、この『泣くのは、あとにして』は紛れもない傑作。
 高校の国語教師ボニーは、早朝に夫ロッドの前妻ジョーンから呼び出された。あなたとあなたの娘さんに危険が迫っている、と。渋々足を向けたボニーが発見したのは、ジョーンの亡骸だった。状況下、当然ながら殺人の嫌疑がボニーにかかる。おまけに実の娘アマンダが幼いにも関わらず、ロッドとジョーンの子、サムとローレンを引き取らねばならなくなった。たださえこの子達は思春期で、ボニーとは難しい関係にあるのに。やがてボニーはジョーンの死で得をしたロッド、そして不意に身辺に現れた、前科持ちの実弟ニック、そして変人のサムに疑いの目を向けるようになる。誰も信用ではない。
 ボニーの記憶、ボニーとニックの会話の中から現れる、彼らの両親の真の姿が痛ましい。最後の一ページに至るまで決して気を抜くことのできない、フィールディング特有の緊迫感が強く押し出された、サスペンスの秀作。

優しすぎて、怖い (文春文庫)

優しすぎて、怖い (文春文庫)

秘密なら、言わないで (文春文庫)

秘密なら、言わないで (文春文庫)

↑ジョイ・フィールディングの傑作群