FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ロング・ドッグ・バイ/霞流一

ロング・ドッグ・バイ (ミステリーYA!)

ロング・ドッグ・バイ (ミステリーYA!)

 犬は、やはり柴犬だ。シベリアン・ハスキーゴールデン・レトリバーなど洋犬の大型種にも憧れるが、日本犬である柴犬のきりっとした、それでいて愛らしい風情は他に並ぶものがない。猫派の当方だが、飼うんだったら柴犬と心に決めている。というわけで本書であとがきを書いている霞流八もとっても可愛く感じられた。
 本書の帯には、「世界初の本格ドギー・ハードボイルド」とある。が、登場人物のほとんどが犬という点を除けば、いつも通りの霞流一のミステリである(だから登場犬物と呼ぶべきか?)語り口はハードボイルド、アクションシーンもあるが、謎は本格ミステリの手法で解決される。
 雑種の探偵犬アローは悩んでいた。彼は東京の郊外、浮羅田町に住む犬だ。かつてこの町には男の中の男、雄犬の中の雄犬と言うべきレノという純白の柴犬がいた。人命救助から泥棒解決まで幅広い活躍ゆえ、死後にも銅像が残された彼だが、その銅像の周辺でおかしなことが頻発している。なぜか彼の銅像の真前にゴボウが植えられていた。やがて町で亡きレノが再び出現したのではないかという噂が広がる。少年犬ボンタに依頼を受けたアローは、様々な特技を持つ八匹の犬と事件解決に乗り出す。
 映画ネタも相変わらず山盛り。真相は小粒といえば小粒だが、幽霊のくだりなど、語り手達が犬でなければ不思議とさえ思わなかっただろう謎の設定とその解決が面白い。