FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ゴーストアビー/ロバート・ウェストール

ゴーストアビー (YA Dark)

ゴーストアビー (YA Dark)

 児童文学のジャンルでも、秀作『かかし』を初めとして恐怖描写にはまったく手を抜かないロバート・ウェストール。そんな彼が幽霊屋敷ものを書いたと知り、わくわくとした。大きな邸宅を舞台にした怖いお話が大好物だ。
 だから、楽しみにしていたのに。
 生ぬるい。
 児童向けを過剰に意識したのか、生ぬるい。
 十二歳の少女マギーはままならぬ日常に苦しんでいた。母が死んだあと、父ジョージは無気力となった。建築士だったが仕事をしなくなり、家庭にも目を向けなくなり、双子の弟の世話を含めて家事はほとんどすべてがマギーの背に覆いかぶさってきた。むろんまだ幼い彼女には重荷だった。
 そんなとき、ジョージに舞い込んできた仕事は、マギーからしても魅惑的に感じられた。かつては修道院だった邸宅に住み込み、この屋敷を修復する。現在の息苦しい生活から逃れることができる、なによりジョージに生きる張り合いが出てきたことを見て取り、マギーは嬉しかった。
 だが、この館はただの古く、壮麗な館ではなかった。なにかがいる。この館にはなにかがいる。
 おそろしく魅惑的なあらすじだが、期待値が高すぎたためか、ありふれた幽霊屋敷小説に終わっている。そもそも幽霊の使い方がさしてうまくない(出したところであの幽霊、あんまり意味がなかったような)
 館の魔性というよりも、ジョージを中心とした人間関係の方がスリリングだった。