FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

秋期限定栗きんとん事件/米澤穂信

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

 この子達、ちょっと痛い目に合えばいいのに。
 というのが上下巻を読了したときの率直な感想だった。まあ、その辺りは冬期で期待しよう。連続放火というメインの事件そのものよりも、小佐内ゆきの言動に隠された謎、ラスト一行で明かされるその秘密、そして多くの読者が持つであろう「この理由でここまで?」という驚きに、このミステリの魅力と「嫌な話」ぶりが詰まっている。
 小市民としての人生をまっとうしようと、これまでの互恵関係を解消し、他の異性と向き合うようになった小鳩常悟朗と小佐内ゆき。しかし彼らの持つ本性が、彼らをぬるい生活へと埋没させようとはしなかった。
 ゆきの交際する瓜野高彦は新聞部に所属する。彼が新聞部を率い、地元で頻発する連続放火の謎を追う。時折ゆきの助言を借りながら。
 彼の連作ミステリ『儚い羊たちの祝宴』の帯は、「あらゆる予想は、最後の最後で覆される。ラスト一行の衝撃にこだわり抜いた、暗黒連作ミステリ」だが、連作ミステリという単語を除けば、その惹句はむしろこちらの作品の方が相応しそうだ。
 瓜野はここまで嫌な目に遭う必要はない……という感想を抱いた当方は、冬期で二人が仰天するような事件に巻き込まれることを願う。

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)