FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ルイザの不穏な休暇/アンナ・マクリーン

ルイザの不穏な休暇 (創元推理文庫)

ルイザの不穏な休暇 (創元推理文庫)

 名探偵オルコットのシリーズの二作目である。現代日本とは環境がまるで違うとは言え、「若い娘さんがそんなに働かなくていいよ」と思わずそんなことを言いたくなるようなヒロインだ。ルイザの父エイモス・ブロンソン・オルコットは著名な教育者だが生活能力はまるでなし、母アビゲイルは心優しく生まれながらの慈善家、よって父母の双方が四人の子女を持ちながら日々の暮らしを支えていく能力がなく、生計の問題は一家の次女、二十二歳の駆け出し作家、ルイザの双肩にも重くのしかかっている。ルイザは小説を売り、仕立てをして、こまめに働いている(正直言ってパパはもっと家計の足しになるようなことをするべきだと思う)。休暇と言っても、女性の皆さんほとんど休んでないし。
 一八五五年、ルイザ・メイ・オルコットは、新人の作家で、まだ自分の作品を書いていないのだという意識にとらわれていた。伯父ベンジャミンに招かれ、峡谷にある田舎町で一夏を過ごすこととなったオルコット一家とルイザの友人シルヴィアだが、移民の青年の転落死をはじめ、土地には不穏な空気が渦巻いていた。
 ジョー……じゃなかったルイザは小説の構想を練ったり、パパのこさえた畑で食べ物が取れるかどうか悩んだり、殺人事件の調査をしたり、アマチュア劇団の稽古に参加したり、峡谷でランニングしたり、とにかく元気な娘である。一作目と違い、ルイザの他の姉妹もそこそこ出てくる。
 相変わらず面白い。歴史ミステリという分野を越え、お勧めの一作。『若草物語』を読んだことがある人にも、ない人にも。