FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

図書館長の休暇/ジェフ・アボット

図書館長の休暇 (ミステリアス・プレス文庫)

図書館長の休暇 (ミステリアス・プレス文庫)

 珍しくも男性作者が描いているコージー・ミステリのシリーズである。今回は番外編めいた一作で、この巻だけゴシック小説風である。
 青年図書館長ジョーダン・ポティートは休暇を取り、テキサスの田舎町ミラボーを離れた。「父」と恋人キャンディスとともに。「父」の富豪の一族の親睦会に出席するため、ある孤島へと向かったのだ。
 だがこの休暇、ジョーダンにとっては(名探偵にとっては大抵そうなのだが)最初から波瀾に飛んでいた。彼の元には脅迫状が舞い込んでいたし、彼と「父」の関係もまた複雑なものだったから。そして親族には一癖も二癖もあるものが多かった。さらに島には戦争に絡んだ悲劇がいくつもの影を落とし、怪談を生み出していた。
 名探偵の休暇は、決して休暇とならない。やがてジョーダンが父の一族と顔を合わせたとき、殺人事件が発生し、彼は「父」の家の歴史に隠されてきた秘密と向かい合うことになる。
 一巻のネタバレがある……登場人物一覧でばっちりと書かれている……ため、シリーズ刊行順、もしくは一作目に目を通したのちに読むことをお勧めする。出生の秘密のことといい、今回で起きた事件といい、ジョーダンは薄幸の青年である。
 ゴシックミステリとしてはベタだが、そこそこ面白い。