FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ウィッチフォード連続殺人/ポーラ・ゴズリング

ウィッチフォード連続殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ウィッチフォード連続殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 文庫本の裏のあらすじ紹介では本格、訳者によるあとがきでは警察小説とされているが、当方の分類ではこのミステリ、サスペンスでもある。それもよくできたサスペンス。
 イギリスはコーンウォールの美しき田舎町ウィッチフォード。この静かな町を震撼とさせる事件が発生した。女性達が咽を裂かれ、次々と殺されていく。あたかも切り裂きジャックが現代に蘇ったような事件にリューク・アボット主任警部が挑む。
 ハードボイルドだろうが、コージー・ミステリだろうが、そしてサスペンスだろうが、必ずロマンス(ハーレクイン風味)が出てくるがゴズリング流だが、本書でも離婚歴のある女医ジェニファー・イームズとアボット主任警部の恋愛が陰惨な連続殺人事件に彩りを添えている。ジェニファーには疎遠になりつつあるボーイフレンドのマーク・ピーコックがいるのだが、このマーク、傾きかけた名門の息子で、家屋敷を維持するのに必死になっている。彼には家名とピーコック屋敷にえらく執着する母親がいて……詳しくは書けないが、このピーコック母子のくだりが、この情緒的なサスペンスにゴシック小説の色合いを加えている。
 サスペンス小説がお好きならぜひ。