FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ハゲタカは舞い降りた/ドナ・アンドリューズ

ハゲタカは舞い降りた (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ハゲタカは舞い降りた (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 メグ・ラングスローシリーズ(巻末の坂田靖子の表現では「メグの鳥シリーズ」)の第四作目である。桜庭一樹桜庭一樹読書日記』の中では「狂気のコージー・ミステリ」と表現されているこのシリーズ、コージー・ミステリ群の中でも際立って喜劇の要素が大きい。出てくる人間、出てくる人間、すべてが変。ヒロインのメグ……いつもトラブルに巻き込まれる素人探偵、本業は鍛冶職人……は自分勝手な暴走をしているが、大丈夫、他の登場人物はさらに暴走しているので彼女の勝手さは別に目立ってない(褒め言葉になってないか?)
 メグの弟、ロブが作ったゲームが大ヒットした。裁判を繰り返し、自己の弁護士としての才能や地位を高めていくそのゲームの名は『地獄から来た弁護士』。思わず脱力しそうなタイトルだが、ロブが経営するオフィスはさらに脱力感あふれるものとなっていた。ハゲワシがいて、凶暴な犬がいて、太った猫がいて、コンピュータおたくの社員の群れがいて、複数のセラピストが常駐している。この煩雑なオフィスの中にメグもいた。他の皆には伏せているが、弟からの依頼である件を調査しているのだ。ネット上に『地獄から来た弁護士』のまがいものが流れているのだ。登場人物がすべて素っ裸であるそのゲームの名は『地獄から来た裸の弁護士』。やがて社員の一人が発生する。
 賞賛のつもりで言うが、実にはっちゃけている。全編に渡って生きがいい。メグと犯人の対峙シーン、人質が次々と増えていくしょうもない流れには思わず笑った。こののりの良さは、ちょっと他に比類するものがない。
 セラピストが開発したポジティブなことばっかり話すぬいぐるみの熊、手元にあったら即破壊してしまいそうだ。