トスカの接吻/深水黎一郎
- 作者: 深水黎一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/08/07
- メディア: 新書
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本格ミステリの場合、殺人の絡む舞台が出てきたら、その舞台で殺される役の人間はほとんどがそのまま実際に昇天させられる。異邦のものでも我が国産のものでも変わらない。深水黎一郎『トスカの接吻』でもこの電灯が忠実に守られており、すり変えられたナイフゆえ、刺された男は天に向かって旅立ってゆくのである。哀れなり。
オペラと、その世界に生きる人々を被害者加害者容疑者に据えたミステリと言えば、エドマンド・クリスピン『白鳥の歌』を連想させらる。あれに負けないぐらい、この『トスカの接吻』も華やかな雰囲気も包まれている。しかもミステリとして面白い。犯人は……気の毒としか言いようがない。
著作三冊のうち読んだのは二冊目だけだが、十分楽しめた。先が楽しみな作家。