FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ヴェネツィアの悪魔/デヴィッド・ヒューソン

ヴェネツィアの悪魔 上 (RHブックス・プラス)

ヴェネツィアの悪魔 上 (RHブックス・プラス)

 文庫本で上下巻のミステリである。上巻の裏表紙のあらすじに「歴史と音楽が紡ぐ幻想的なミステリ」とあるのだが、実際に読んでみると「音楽が絡んだ通俗的なミステリ(歴史もあるよ)」という印象の物語である。館の地下室から発見された謎めいた楽譜、荒らされた美少女の墓、失われた楽器といった、いかにもな小道具のわりに耽美的、ゴシック的な雰囲気に欠ける。
 現代と一八世紀、それぞれのヴェネツィアが舞台で、その時代を生きる少年が、巻き込まれた犯罪、そして出会った女性との恋愛によって成長していくという筋立てである。どちらの少年の周囲にも、一見紳士的だが魂の腐った悪党と、薄幸の美女が出てくる。
 テンポが良く、読みやすく……それが最大の美点だろう。百点が満点だとすれば、ちょうど七十二点ぐらいの点数がつくであろうエンターテイメント小説である。主役の二人の少年に感情移入できれば、もっと点数は高くなるかもしれない。

ヴェネツィアの悪魔 下 (ランダムハウス講談社文庫)

ヴェネツィアの悪魔 下 (ランダムハウス講談社文庫)