FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

デッド・サイレンス/ジェームズ・ワン監督

 こ、こんなにアホなことをこんなに真剣に……!!

 ある種、ディクスン・カー『魔女が笑う夜』を連想させられる。真犯人はなにを考えながら、あのトリックを弄していたのだろう。笑いの要素があるだとか、一発ギャグだとか、色々と聞いていたのだが、当方が密かに心に抱いていたネタとは違っており、十二分に楽しめた。
 ジェイミー・アーシェンは苦々しさを抱きながら故郷レイブンス・フェアへと向かっていた。彼は地元の富豪の御曹司だったが、生家を捨て父エドワードとは絶縁していた。理由の一つとして父の妻、つまりジェイミーの母をエドワードが自殺に追い込んだということがあった。ジェイミー自身の妻は謎めいた人形を贈られたのち、舌を切られるという形で惨殺されていた。しかも容疑者は、彼本人だ。事件を解くヒントは、レイブンス・フェアの女性腹話術師メアリー・ショウにあると考えた彼は、生まれた町へと向かう。レイブンス・フェアはひどく荒廃していた。そして驚いたことに、二度目の妻に逃げられた父の傍らには、三度目の妻エラが寄り添っていた。
 あどけなくも禍々しい人形、衰退していく町、忌わしい伝説、銀髪を結い上げた黒衣の老女の亡霊、閉鎖的な名門と車椅子のその主人、湖のほとりにある劇場、建築物の炎上……とありとあらゆる正統派ゴシックホラーの要素をすべて取り入れている。
 見ていてわくわくとした。だけど結末で前方につんのめった。マジかよ!
 矛盾する言い草だが、この映画、すごく面白かった。ラストのオチを許容できるかできないかが評価の大きな分かれ目だろう。当方はできた。悪の正体とその見せ方も良かった。人によって愚か極まりない作品だろうが、当方は大好きである。今のところ、2008年で一番面白かったホラー映画。