FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

注文の多い宿泊客/カレン・マキナニー

注文の多い宿泊客 (ランダムハウス講談社文庫)

注文の多い宿泊客 (ランダムハウス講談社文庫)

 自立したヒロイン、ハンサムな彼氏、風変わりな周囲の人間、美しい自然を破壊しようと企む開発業者……王道中の王道の設定を持つコージー・ミステリ。あまりにありがちな設定に、「とてつもなく陳腐な作品に仕上がっていたらどうしよう」などと思っていたが、そこそこ面白かった。
 アメリカ北東部、メイン州の風光明媚なクランベリー島。ここでB&B(朝食付き簡易ホテル)を経営するナタリーは人生に何度とない危機に陥っていた。三十代後半までテキサス州公園野生動物局で働き、ようやく実現させた夢(と同時に老後の生活の支えとなってくれるはず)のB&Bの経営が頓挫しようとしている。泊り客である開発業者カッツの計画によって。さらにまずいことに、彼は死体で発見され、あっという間にナタリーは容疑者第一号になってしまった。我が身を守るため、ナタリーは調査に乗り出す。
 この嫌われ者にして「自然環境を乱そうとする悪徳実業家が殺され→自分が容疑者、冤罪を晴らすために調査に」という一連の流れがまた、コージー・ミステリのシリーズ第一作にありがちなストーリー展開である。と書くとけなしてばかりのように聞こえるかもしれないが、前記のようにそこそこ面白い。
 傑作だとか秀作だとか呼べず突出している部分はないが、帯にあるよう「旅気分でのんびりミステリ」できるのに調度いい作品。よほど良き条件を兼ね備えた土地なのか、次回の作品でもまた開発業者がやってきて、殺人事件が発生するらしい。クランベリー島、よほど開発業者と殺人事件に愛される島のようだ。