注文の多い宿泊客/カレン・マキナニー
- 作者: カレンマキナニー,上條ひろみ
- 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
- 発売日: 2008/07/10
- メディア: 文庫
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自立したヒロイン、ハンサムな彼氏、風変わりな周囲の人間、美しい自然を破壊しようと企む開発業者……王道中の王道の設定を持つコージー・ミステリ。あまりにありがちな設定に、「とてつもなく陳腐な作品に仕上がっていたらどうしよう」などと思っていたが、そこそこ面白かった。
アメリカ北東部、メイン州の風光明媚なクランベリー島。ここでB&B(朝食付き簡易ホテル)を経営するナタリーは人生に何度とない危機に陥っていた。三十代後半までテキサス州公園野生動物局で働き、ようやく実現させた夢(と同時に老後の生活の支えとなってくれるはず)のB&Bの経営が頓挫しようとしている。泊り客である開発業者カッツの計画によって。さらにまずいことに、彼は死体で発見され、あっという間にナタリーは容疑者第一号になってしまった。我が身を守るため、ナタリーは調査に乗り出す。
この嫌われ者にして「自然環境を乱そうとする悪徳実業家が殺され→自分が容疑者、冤罪を晴らすために調査に」という一連の流れがまた、コージー・ミステリのシリーズ第一作にありがちなストーリー展開である。と書くとけなしてばかりのように聞こえるかもしれないが、前記のようにそこそこ面白い。
傑作だとか秀作だとか呼べず突出している部分はないが、帯にあるよう「旅気分でのんびりミステリ」できるのに調度いい作品。よほど良き条件を兼ね備えた土地なのか、次回の作品でもまた開発業者がやってきて、殺人事件が発生するらしい。クランベリー島、よほど開発業者と殺人事件に愛される島のようだ。