FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

廃墟ホテル/デイヴィッド・マレル

廃墟ホテル (ランダムハウス講談社文庫)

廃墟ホテル (ランダムハウス講談社文庫)

 廃墟の魅力に取り憑かれたものたちが、かつて栄華を誇ったホテルへと忍び込む。歴史学の教授と、かつてのその教え子三人、そして記者を自称する男。彼らが見たものは畸形化した猫や鼠だった。
 ホテルのオーナー、モーガン・カーライルは血友病のため、極端に行動を制限されて育った。そして廃虚に入り込んだものたちは残された品物から、カーライルがホテルの客達を覗き見していたことを知る。離婚や病を苦にしての自殺、性的虐待を受けていた少年が加害者たる父親にバットを振り下ろした殺人……カーライルは、客達の不幸を覗き見し、コレクションのようにそれらの新聞記事などを蒐集していたのだ。やがて彼らは知る。この廃墟ホテルにいるのが自分達だけではないということに。
 閉ざされた廃墟(しかも、かつては豪奢なホテル)に、謎めいた動物達、忌まわしい趣味を持つ主人と前半ゴシックホラー風なので「おお」と思っていたら、後半はそれぞれの思惑を持つ登場人物が入り乱れてのアクション小説へと変貌する。舞台が特異、登場人物はそれぞれ特徴がはっきりしており、物語の展開も早いので、ハリウッドで映画にしてみたら面白いかもしれない。これは褒め言葉として言っている。そこそこ面白かった。