皆川博子さん講演会
19世紀末から20世紀の初めのウィーン、上海、ハリウッドを舞台とした『双頭のバビロン』。16世紀に実在したアイルランドの女海賊グレース・オマリーと、彼女と面会したこともあるイングランド女王エリザベス一世を描いた『海賊女王』、イギリスはヴィクトリア朝(それ以前の時代も出てくるようだ)の偽書と古書修復を絡めた『マグノリア偽書』。
どれもが素晴らしく面白そうな物語。6月14日、京都の同志社大学の講演会で、「今後の執筆、掲載予定を教えてください」との質問への返答として上げられたもので、イギリスが好きなこちらとしては「彼女のイギリスものが読める!」と楽しみで仕方ない。
そう、6月14日は、同志社大学で皆川博子さんの講演会だったのです。
品の感じられる姿から、自分の好きな本や映画に語らせると実に長いところまで、ファンの想像を少しも裏切らない女性でした。「小学生の頃、ドストエフスキー『白痴』を読んで、無垢な公爵に萌 え た(とご本人がおっしゃった)」だとか、「デビュー前後、皆川博子は作家としてものになるかならないかで山口瞳と野坂昭如の二人に賭けられ、新宿の喫茶店で泣いた」だとか、「パラグアイに取材旅行に出かけたときに、ホテルとも呼びにくいようなホテルで遭遇した恐怖の数々」だとか、衝撃的なエピソードも聞かせていただきました。
またエルマンノ・オルミ監督『ジョバンニ』の主演男優、フリスト・ジフコフが『聖餐城』の主役達のモデルで、彼を明朗闊達にすればフロリアン、いくらか野卑にすればアディになるだとか、絶対に実現しないだろうか鳩山郁子『カストラチュラ』をノベライズしてみたいだとか、興味の尽きないエピソードがたくさんありました。
もっと皆川博子さんを好きになったぞ、自分の好きな本をいっぱい読んで、好きな映画をいっぱい見るぞと思わせてくれた講演会でした。
皆川博子さん、ありがとうございます。
そして同志社ミステリ研究会の皆さん、ご苦労様でした。