FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

キサラギ/佐藤祐市監督

キサラギ スタンダード・エディション [DVD]

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 ミステリマニアの友人複数から奨められていた作品。ようやく見てみたが、これは評判を取るのもよく分かった。実にまっとうな密室劇ミステリ。
 グラビアアイドル、如月ミキ。彼女は火災のため自分の暮らすマンションで生命を失っていた。自殺だと警察も世間も断定した。ごく少数の人間を除いて。
 ミキの死より一年後、五人の男が一室に集まろうとしていた。如月ミキを応援する掲示板の管理人&常連で、ミキの追悼式をするつもりだったのだ。ハンドルネームで呼び合う彼らは、互いの素性を知らない。だがミキについて、そしてミキの死について語り合ううち、自殺という判断が揺らいでいく。我々の持つ情報と照らし合わせれば、自殺という彼女の行動はおかしくはないだろうか?そして推理を重ねていくうち、集まったメンバー五人の意外な素性が少しずつ明らかになっていくのだ。この「意外な素性」というのがまた……いや、ネタバレになるからやめておこう。
 交わされる会話が楽しく、真相がなかなか美しい。これまで男五人の中で語られてきた「如月ミキ」像としっくり溶け合っている。本音を言えば「掛け合いは楽しいだろうが、ミステリ部分ははいまいちだろうな」などと思っていのだ。しかしミステリ部分もきちんとしていることで好感度大。
 だから最後の姫君御本人の登場はいらない。彼女は「不在のヒロイン」で良かった。ラストの宍戸錠はもっといらない。
 洋画邦画関りなく、ここ数年間の中もっともよくできたミステリ映画だった。