FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ケンブリッジ大学の殺人/グリン・ダニエル

ケンブリッジ大学の殺人 (扶桑社ミステリー タ 9-1)

ケンブリッジ大学の殺人 (扶桑社ミステリー タ 9-1)

 これは……ちょっと読む前の期待が大きすぎたかな。
 著者はケンブリッジ大学卒の考古学教授、彼が第二次世界大戦中イギリス空軍情報部将校としてインドに駐留していたときに書かれた作品。タイトル通り、ケンブリッジ大学で起きた二つの殺人を扱っている。
 長期休暇の前夜、ケンブリッジ大学で門衛が射殺された。やがて帰省した学生の中から大学のある関係者の死体が見付かったことで事件は一挙に複雑な影を帯びる。
 推理合戦、推理合戦、とにかく推理合戦の一作である。プロの警察官から大学関係者まで多くの人間が二つの殺人にそれぞれの考えを持ち、己の推理を披露する。実を言えば、この不正解の推理、いわば「捨てネタ」の方に、真実よりはるかに面白い、きれいなものがいくつもある。
 訳者あとがきにもあるよう、真相はいくらか脱力もの、「これってわざわざ二重殺人にする必要あるか?」というものであるため、読了したのちの点数は、読んでいる最中より低くなる。古典的な本格ミステリのファンが読めばいい作品。