FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

聖域/大倉崇裕

聖域

聖域

 オタクから落語まで、幅広い分野をミステリの中に巧みに取り組む大倉崇裕の新境地である。実に男臭い、ハードボイルドな作品だ。
 学生時代の登山仲間にして好敵手、安西が滑落、遭難したと聞いたとき、草庭は耳を疑った。安西が迷い込んだのは、それまで彼が極めてきたものより遥かに難易度の低い山だったからだ。安西の事件は、彼の恋人が生命を失った事件となにか関わりがあるのか。ある事件以来、山から遠ざかっていた彼は、親友を巡る事件に頭を突っ込み、再び山へと挑むようになる。
 硬派にして骨太。謎解きの要素もあるハードボイルドという意味合いでは、ロス・マクドナルドやマイクル・Z・リューインに似ている。親しみやすいとは言いにくい作品だが、大倉崇裕の新境地は堪能できる。