殺人展示室/P・D・ジェイムズ
- 作者: P.D.ジェイムズ,青木久恵
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/02/17
- メディア: 新書
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文章に格を感じさせる代わりに重苦しい。
ストーリー展開を決して急がないがゆえに、話の進行は時として苛々するほど長い。
P・D・ジェイムズ御馴染みの気品・重厚・退屈のセットを、この『殺人展示室』もやはり持ち合わせている。これらを受け付けない人間は、ジェイムズに手を出さない方が無難だ。
一九三〇年のロンドンでセールスマンが自己の身代わりにするためにホームレスを殺し、車ごと焼いた。彼は異様なほどの女好きが原因で破滅の淵に立たされており、身を隠す必要があったのだ。
現在のハムステッド・ヒース。やはり車ごと焼き殺された男がいた。ただし無名のホームレスではない。名の知れた殺人事件に関わる博物館を創立した一族の次男、医師のネヴィルだ。彼は父親が興した博物館を嫌悪しており、兄妹と違い、存続に反対していたのだ。
富と名誉を持つ一族の内紛という古典的な題材を扱い、ミステリとしてそこそこ成功させている。彼女の代表作とは言えないものの、ファンは十分楽しめる。