緑の檻/ルース・レンデル
- 作者: ルース・レンデル,山本楡美子,郷原宏
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1988/07
- メディア: 文庫
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グレイはかつては作家だった。本を一冊著したきりで、その後一向に芽が出ず、今は森の奥のコテージで極貧生活を送っている。
グレイはかつては息子だった。彼のただ一人の肉親である母親は、旅行中に知り合った年下のフランス人の男と結婚し、そちらの国で生活している。グレイは、もはや母親を愛してはいなかった。
グレイはかつては恋人だった。あまりにも若くして結婚したため、魂は成長せず、肉体のみが大人となってしまった人妻ドルシラがその相手だ。そして、そのドルシラのため、グレイはかつて犯罪者となるところだった。だが、どれも終わったことだった。ドルシラとの恋愛も、彼女と企てた犯罪計画も。
だがフランスから母危篤の報を受けたグレイは異国へと飛ぶ。そしてその瞬間から蔦のごとく、過去の様々な事柄が絡み付いてきたのだ。
動物好きには、「犬」を巡る悪夢は大変堪えたことだろう(私にはとっても堪えた)。グレイとドルシラとがたてた計画というのははっきりとは書かれないものの、彼ら二人が置かれている状況から推察はできる。ただその企てがどのような形でグレイに襲い掛かるかがこの本の醍醐味である。
さすがはレンデル、とってもうまい。そしてとてもえぐい。