メールオーダーはできません／レスリー・メイヤー

メールオーダーはできません (創元推理文庫 M メ 2-1)

　子持ちのパート主婦って忙しいんだなあ。殺人事件に巻き込まれたのならなおさらだ。
　ミステリ好きの主婦ルーシーは、優しい夫ビルと可愛い三人の子供に恵まれている。
　通信販売会社でパートをしており、この時期は家事とパート、そしてクリスマスの準備に忙しい。家族のプレゼントをパートしている会社で買って、手作りのクッキーを焼いて、町の主婦達の会合に顔を出して、義父母と実母が家に来るからその準備もして、子供の劇のために衣装を縫って、新しいペットたる子猫を貰いに行って、夫（ルーシーにとっては実父）を失って以来すべてを拒絶するようになってしまつた実母の心配をして、死体を発見したからその調査もやって……という具合である。あれ、殺人事件の調査って家事の一つ？と思いたくなるようなナチュラルさでミステリがルーシーのせわしない生活に入り込んでいる。
　死んだのは、ルーシーのパート先の会社の経営者。弟が跡を継ぐようだが、現場の責任者が変わってしまい、職場の雰囲気もずいぶんと変わってしまう。ルーシーは好奇心に赴くまま調査をはじめ、そして行き当たりばったりに犯人に辿り着く。それ偶然が過ぎるじゃん、と思うものの十分受け入れられるのは、ひとえにルーシーの日常部分が面白いからである。
　もう少しミステリ部分がしっかりしていたら完璧。