FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

アイルランドの哀しき湖/エリン・ハート

  

アイルランドの哀しき湖 (RHブックス・プラス)

アイルランドの哀しき湖 (RHブックス・プラス)

 『アイルランドの柩』の続編である。
 アイルランドの湿地には、幾つ死体が埋まってるんだ。
 そんな突っ込みを入れたくなるが、アイルランドが舞台で、主役が解剖学博士と考古学者のコンビではこの設定は致し方ない。
 アイルランドの泥炭湿地から、鉄器時代の死体が発見された。「三つの死」という儀式が死体には施されている。解剖学者ノーラが死体を保全するためにやってきた。だが、時を置かずしてまた「三つの死」の儀式が施された死体が見付かる。しかもそれは現代の人間だった。
 ヒロインが暗い過去を持つ職業人、彼氏のかつての恋人が登場して心乱され、しかもヒロイン本人が犯人に狙われるというものすごくありがちな展開になってはいるものの、文章が美しいため読める。
 ヒロインやその彼氏、そのかつての恋人よりも、脇のブラジル一家の人物像の方がよほど際立っていた。テレサ・ブラジルは身勝手と言えば身勝手な女性だが、印象が強い。最後の行動もある種の潔さと破滅性を感じさせる。
 総じて『アイルランドの柩』ほどのインパクトはないが、そこそこ面白かった。次はどうも舞台がアイルランドではないようなので「アイルランドの……」という邦題は付けられないだろう。この辺り、どうなるんだ?