FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

刑事マッカロイ 殺しのリハーサル/デヴィッド・グリーン監督

刑事マッカロイ 殺しのリハーサル [DVD]

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 「刑事コロンボ」で御馴染みのリチャード・レビンソン&ウィリアム・リンクが製作・脚本を勤めたミステリである。面白くないわけない。
 暗い劇場に、劇作家アレックスは佇む。彼は一年前、婚約者で有名な女優であるモニカを失っていた。警察は彼女の死……自宅の窓よりの墜死……を、自殺だと断定していた。だが、アレックスは納得していなかった。確かにモニカはエキセントリックなところがあり、ちょうどその日に初日を迎えた芝居も評判が良くなかった。だが彼女の態度がおかしかったのは、それのみが原因ではない気がするのだ。
 やがてアレックスによって集められた男女が舞台に並ぶ。中年の男性役者、若い男女の役者、監督、そしてプロデューサー。いずれも一年前、アレックス、そしてモニカとともに働いた仲間だ。
 アレックスは新しい芝居だといって彼らに台本を渡す。それはジェシカという女優が殺される事件を扱ったもので、当然モニカの死を彷彿とさせるものだった。怒り、戸惑い、帰ろうとした彼ら五人の足を引きとめたのは、マッカロイ警部補だ。アレックスは、当時の捜査を担当した刑事をも、この劇場へと招いていた。
 「ドンデン返しの結末」と言われれば、話の展開が見えてはくるものの、やはりこの洗練はただものではない。劇中劇の趣向も楽しいが、犯人とモニカとのつながりにも、思わず「ああ」と呟いた。きちんと伏線が張ってある。
 リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンクの単発物としては『謎の完全殺人』も良かったが、これもいい。『イスタンブール特急』と『消えた花嫁』もぜひDVD化を。