FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

クィーン/スティーヴン・フリアーズ監督

 ピーター・ディキンスン『キングとジョーカー』と同じく、日本の皇室じゃまずできない類のエンターテイメントである。
 エリザベス二世と、新首相だったブレアを主役に据えたドラマで、一言で言えば英国王室という、おそろしいほど特異な家庭を舞台にしたホームドラマである。
 離婚後も国民に絶大な人気を誇ったダイアナ。彼女の死後、王室は思わぬ危機を迎えることとなった。もはやダイアナは王族ではない。伝統と格式を守るため、幼い王子を守るため、女王は民間人としてのダイアナの葬儀を望んだ。だが、その対応に関するイギリス国民の怒りや憎しみは、王族やその周囲の人間の想像をはるかに超えるものだった。
 王家が、ダイアナを殺した。
 女王は、冷たい気取り屋だ。
 連日続く激しいバッシングに、生涯を国と国民に捧げてきたつもりだったクィーンは愕然とする。機を見るに敏、人々の感情を読んだブレアは、死せるダイアナのことで女王に何度となく意見をする。
 一人の女性の葬儀(世界的な有名人ではあるが)というこぢんまりとしたテーマを扱いながら、よく練られたドラマである。むろんこれは創作物、エリザベス二世やブレアやダイアナは、美化され、理想化されているに違いない(エディンバラ公チャールズ皇太子はもっと美化してあげなよ……)
 凡庸な意見だが、品性あり古風で感情を滅多に表に出さないエリザベス二世を演じたヘレン・ミレンが素晴らしい。
 秀作。