殺人創作講座/アンナ・クラーク
- 作者: アンナクラーク,猪俣美江子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1989/10
- メディア: 新書
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この作品と、ハヤカワ文庫ミステリアス・プレスから『ルースを探して』が翻訳されているのみの作家である。惜しい。時間があるときに出会っていたら、洋書を買ってでも読んだだろうに。
英文学教授ポーラは師にして友にフランシス(彼女は自宅の石段で足を滑らせたのだ)の代わりに、ある創作講座を教えることとなった。といってもカルチャースクールの類ではなく、富裕で身体が不自由な女性レディ・ヒンドンが個人的に行っているものだ。そのときの創作講座のテーマは、「家庭内の殺人」。そして「家庭内の殺人」の作品を書いてきた生徒達はいずれも、横暴な配偶者が唐突に死んでいたり、末期の近付いた兄弟姉妹が安楽死という形で生命を失っていたり、複雑な過去を抱えていた。
やがて特異な魅力とカリスマ性、そして邪悪さを持ち合わせるレディ・ヒンドンが殺される。
細かな人間観察、美しく繊細な自然描写といい、見事なものだ。ある作家について語るのに、他の大家の名前を持ち出すのは陳腐なことなのだけれど、ルース・レンデルをどことなく連想させられる。ルース・レンデルから毒気を奪い、代わりに語り手の女性に人間としての強さや明るさを与えたならば、アンナ・クラークになるのだろう。
このポーラのシリーズも、そしてこの作家の他の作品も翻訳して欲しい。