FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

マッドアップル/クリスティーナ・メルドラム

マッドアップル (創元推理文庫)

マッドアップル (創元推理文庫)

 先月、と言うことは2012年9月に同じ東京創元社から出版された、ダイアン・ジェーンズ『月に歪む夜』もバーバラ・ヴァイン(=ルース・レンデル)を連想させられる、美しく不気味で物悲しいミステリだったが、この『マッドアップル』も同じだ。バーバラ・ヴァインが法廷劇を描いたら、こんな感じになるのでは、と思わせる物語だ。また他界とは隔絶されたような環境で、母親と二人暮らし、偏向した教育を受ける少女という設定は、扶桑社から出版されていたルース・レンデル『殺意を呼ぶ館』と共通点がある。
 マッドアップルとは有毒植物チョウセンアサガオのことだ。このタイトルを含め、小タイトルを眺めているだけでも、陶然とするほどきれい。
 母親と伯母、そしていとこを殺害したとして裁判にかけられている娘、アスラウグ。法廷に証人として呼ばれる人々の言葉が、そしてアスラウグの追想が、彼女が母親マーレンと送ってきた、孤独で奇妙な生活を蘇らせる。野草を食べ、薬草を煎じる暮らし。そんな巫女のような、あるいは魔女のような生活が終わりを告げ、ある宗教的な思想に染まった伯母やいとこ達との出会う。母親の秘密、そしてアスラウグの出生の秘密。そして事件が起きる。
 結末がとても意外だ、というものではないので、過程を楽しむお話である。
 お世辞にもとっつきやすいとは言えないが、不思議で美しい物語。

月に歪む夜 (創元推理文庫)

月に歪む夜 (創元推理文庫)

殺意を呼ぶ館〈上〉 (扶桑社ミステリー)

殺意を呼ぶ館〈上〉 (扶桑社ミステリー)

殺意を呼ぶ館〈下〉 (扶桑社ミステリー)

殺意を呼ぶ館〈下〉 (扶桑社ミステリー)