FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

月に歪む夜/ダイアン・ジェーンズ

月に歪む夜 (創元推理文庫)

月に歪む夜 (創元推理文庫)

 確かにこれはバーバラ・ヴァイン(ルース・レンデル)であった。ただしもう少し書き込みが濃ければ、の話である。だがこれは悪口ではない。書き込みがやや薄いせいで、本家本元の読みにくさ、重苦しさも薄れている。ヴァインを原液とするならば、ジェーンズは口当たりをよくした、ソフトな甘い酒のようだ。
 満足していない人生を送っている人間が、延々と過去の事件を追憶し、最後の最後で真相が明かされるという形式は、トマス・H・クックの作品とも似通っている。
 「わたし」ことケイトは、ある老女から一通の手紙を受け取り、そして思い返すことになる。自分の人生をまるごと変えてしまった夏のことを。大学生の頃、ケイトは恋人ダニー、ダニーの友人サイモンとともに、サイモンの叔父の家で夏を過ごすことになった。この三人組に、一人のエキセントリックな若い娘が加わる。トゥルーディー。のちにケイトが知ったことだが、このトゥルーディーは家出娘だった。霊能力者だと自称するトゥルーディーは、この地で殺害された女性の存在にひどくこだわっていた。
 あとは運命の糸が、紡ぎ車に乗って回るよう、四人の男女の運命は悲劇へと向かっていく。バーバラ・ヴァインやトマス・H・クックの諸作品と変わらずに。あるいは作者がお好きなダフネ・デュ・モーリアレベッカ』のように。
 当方でこの種の物語系サスペンスが大好きなので、なかなか面白かった。
 どなたか、バーバラ・ヴァイン(ルース・レンデルでもよし)日本で出版して下さい!

アスタの日記〈上〉 (扶桑社ミステリー)

アスタの日記〈上〉 (扶桑社ミステリー)

アスタの日記〈下〉 (扶桑社ミステリー)

アスタの日記〈下〉 (扶桑社ミステリー)

↑バーバラ・ヴァインの傑作。
緋色の記憶 (文春文庫)

緋色の記憶 (文春文庫)

死の記憶 (文春文庫)

死の記憶 (文春文庫)

↑トマス・H・クック『記憶』シリーズでは、これが好き。
レベッカ〈上〉 (新潮文庫)

レベッカ〈上〉 (新潮文庫)

レベッカ〈下〉 (新潮文庫)

レベッカ〈下〉 (新潮文庫)

↑言うまでもなくゴシックロマンの傑作。