FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ズートピア/バイロン・ハワード監督 、 リッチ・ムーア監督

 

 

 

 ディズニーである。『アナと雪の女王』以来、久しぶりにディズニーの作品に触れる。友人から「ミステリとしても楽しめる」と聞いて見たのだが、最初に出た感想が「紛れもない刑事もののミステリだな!」というものだった。謎と解決、捜査とその過程、そして相棒もの、ロマンスものとして登場人物(動物だけど)のやり取りが楽しめる。
 草食動物と肉食動物が共存した大都市ズートピア。ウサギ初の警察官としてズートピアに配属されたジュディは、田舎出身の優等生が初の社会生活でぶつかる辛酸を舐めつつ警察官として働いていた。周囲からの軽い扱いに憤慨していたジュディだが、肉食動物の連続失踪事件を知り、その一匹であるカワウソの夫人が警察署を訪ねてきたことから、力を貸すこととなる。署内で浮いている彼女が相棒としたのは、かつて彼女を騙した、キツネの詐欺師ニックだった。
 動物が人間のように暮らしているが、そのまま擬人化したわけではないことが、登場人物たちの見た目から分かる。ジュディはウサギ初の警察官なのだが、なぜ先達がいないかと言えば、ウサギそのものが非力で小さい種で、警官に向かないからである。 
 この見た目、有する能力などから来る差別や偏見、そこから生まれる犯罪とジュディは戦うが、その差別感情はジュディ本人の内側にも潜むものである、ということがとても上手に表現されている。

 ズートピアは決して理想郷ではないが、葛藤を乗り越えた先にある将来もまた清々しく描き出されている。
 伏線の張り方、なにより小道具(例のニンジン)の使い方はここ数年で見たどの映画より上手かった。
 これは傑作。