緑衣の女/アーナルデュル・インドリダソン
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『湿地』に続く捜査官エーレンデュルのシリーズ邦訳二作目(原作だと四作目)。
『湿地』と同じく、弱者への暴力がテーマの一つとして扱われるアイスランドの社会派警察小説だ。
住宅地ではるか昔に埋められたと思しき人骨が発見された。現場近くにはサマーハウスがあり、英米軍のバラックがあったらしい。エーレンデュルを初めとしたレイキャヴィク警察犯罪捜査官達の捜査と並行して、ある一家が夫から、そして父親から受ける長年の家庭内暴力とその顛末、そしてエーレンデュル自身の家族との、特に娘エヴァ=リンドとの軋んだ関係が描かれる。
とりたてて目新しさはない。しかしながら「この家族の誰が、誰を……」というサスペンスは物語の最後まで楽しめる。
『湿地』と同じく、暗鬱にして地味な作風だが、小説のうまさゆえか引き込まれるように読める。『最良のお酒は限りなく水に近づく』という文章をどこかで目にしたことがあるが、ちょうど、この「水に限りなく近い最良の酒」の味わいが、アーナル・インドリダソンの小説から感じられる。
最後の最後で、ある登場人物の名前が明かされる場面にはぐっと来る。
エーレンデュルは別れた妻、妻のもとに残してきた二人の子供との関係がうまく行かないことに被害者意識を抱いている様子なのがやや鬱陶しい。
『湿地』より楽しめた。
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