FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

淑女の心得/サブリナ・ジェフリーズ

 「淑女たちの修養学校」シリーズの最終巻。
 ついに「マイケル」様の正体が明かされ、シャーロットとのロマンスが描かれる。
 とても期待していたのだが、期待値が高すぎたのか、今一つ不燃焼感が残る。
 つまらないとは言えないが、ありふれたヒストリカルロマンスで、シリーズのこれまでの作品と比べても、出来が良いとは言えない。
 その理由の一つとして、痛ましい恋愛の過去を抱えた大人の女性で、しかもキャリアウーマンであるはずのシャーロットの恋が、これまでのうら若いお嬢さんとの恋とほとんど変わりがないという点にある。
 また謎の学校支援者「マイケル」の正体が冒頭で実にあっさりと明かされるのも惜しい。シャーロットのロマンスの相手が謎の「マイケル」様となるのは分かりきったことだとしても、彼の目的からして、作者はもう少しこのカードを有効に使うことはできたのではないだろうか。
一つの創作物を他の創作物と比べてあれこれ言うのはあまり好きではないが、同じ大人の女性、同じ女学校の経営者をヒロインとしたメアリ・バログ『ただ魅せられて』……英国の保養地バースの女学校で教壇に立つ四人の女性をヒロインとしたシリーズ“シンプリー・カルテット”の完結作品……は傑作だった。この作品にも「謎の後援者」が出てくるのだが、最後の最後で明かされるその正体と動機が実にうまかった。ややネタを割ってしまうが、こちらの後援者は色恋沙汰には絡んでいない。
 サブリナ・ジェフリーズは「シリーズ最終巻」を書くのが得手ではないのか、摂政皇太子の私生児達をヒーローに据えた<背徳の貴公子>三部作も、最終巻の『麗しの男爵と愛のルール』だけ、気が抜けたような作品だった。
 大好きなシリーズの締めは、もっと素敵な作品であって欲しかった……。