FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

スマイリー/マイケル・J・ギャラガー監督

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 これはただ若い男女が殺されていくだけの、能天気な若者向けホラーだろうと、気楽に、言葉を変えればやや舐めた気持ちで見ていたのだが、意外と怖く、意外と面白く、と結果としてとても楽しむことができた。
 先月見たライナー・マツタニ監督『ルーム205』(http://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/20130618)同様、あるいはもっと質の高い作品で、ホラー映画ファンとしてはとても嬉しい。
 偶然ネット上で出会ったチャットの相手に、「笑いのために」と三回打ち込めば、人肉仮面の殺人鬼スマイリーが現れ、相手を殺害する。この都市伝説に翻弄される女子大生アシュリーの恐怖を描いた作品だ。
 色々と問題のあった実家を出て、ネットで知り合った女性プロキシで同居することになったアシュリー。アシュリーはプロキシとともに参加するオフ会で、スマイリーが人を殺す動画を見せられる。
 手の込んだ悪戯?それとも頭のおかしい殺人鬼が実在するのか。いや、本当は都市伝説の中に紛れ込んだ本物の悪魔なのか。
 アシュリーとプロキシは、彼女達二人だけで見知らぬ相手とチャットしていたとき、卑猥な言葉を連発する露出狂の男性相手に、禁断のワードを打ち込んでしまう。
 スマイリーは現れた。そして男を惨殺した。
 狂乱する二人の周囲に、スマイリーは跋扈する。ネットと匿名の世界だから良いだとか、スマイリーなんてただの都市伝説だと嘯く他の仲間も、禁断の言葉を他人に向けて放っており、一皮剥けばスマイリーを呼び出してしまったことで人を殺し、また自分も殺されるのではないかと、ひどく怯えていた。そして、実際にアシュリーとその周囲の人間達は狙われていく。
 夜道、スマイリーの影に怯えながらパーティーから一人帰るアシュリー、なにを見ても怪しい、なにを見ても怖い、そしてついに……というありふれた場面が、実に怖い。
 怪しい人間が山のように登場する。そして創作者の手玉に取られるよう、見るものの内側でスマイリーの像が二転三転していく。
 「こう来たか」と思わせるスマイリーの「正体」、そしてその直後に起きる出来事も、恐ろしく、後味悪く、ホラー映画の王道を行く。
 傑作。