FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ライディング・ザ・ブレット/スティーヴン・キング

ライディング・ザ・ブレット

ライディング・ザ・ブレット

 『ビッグ・ドライバー』と『1922』が凄く面白かったので、数年ぶりにスティーヴン・キングの世界に戻ってきた。発表された当初はオンライン小説だった中篇を書籍化した中篇。ミック・ギャリス監督が映画化しているが、そちらは見たことがない。
 唐突だが、そして今更のことだが、アメリカの国土は大きい。この国土の大きさが、一つの要因となり、様々なホラー映画、ミステリ映画の形式を生んだ。


 すなわち、恐怖のヒッチハイク
 すなわち、恐怖のモーテル。
 すなわち、恐怖の田舎の村。
 
 どれもアメリカ特有の題材とは言えないが、日本の約25倍という国土を考えたとき、前述の設定がいかに効果を生むかについては驚かされる。見知らぬ人間と車という密室の中で長距離を走らなければならない怖さ、人里離れたモーテルの孤独、そして孤立した村の恐ろしいほどの閉鎖性。
 この『ライディング・ザ・ブレット』は、「恐怖のヒッチハイク」を描いたホラー小説である。
 貧しい境遇の中で、母一人、息子一人で力を合わせ、暮らしてきた親子。大学生となり、親元を離れた息子は、ある日、母が倒れたという電話を受け、取るものも取り合えず飛び出した。彼はヒッチハイクを繰り返し、母がかつぎ込まれた郷里の病院へとたどり着こうとするが、二度目に彼が乗り込んだ車の運転手はこの世のものならぬもので、彼におぞましい選択を突きつけてきた。
 実に慌しい、そして禍々しい一夜を書いた秀作。
 なんとも言えぬ後味の悪さ……結局、それほどのバッドエンドとは言えないのにも関わらず……そして「結局あれはなんだったのか」という不思議な感じは読者に、そして主役の男性におそらく生涯に渡ってつきまとい、離れまい。
 たくさんの未読本が溜まっているキングの世界。次はなにを読もうかな。

ビッグ・ドライバー (文春文庫)

ビッグ・ドライバー (文春文庫)

1922 (文春文庫)

1922 (文春文庫)