FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

護りと裏切り/アン・ペリー

護りと裏切り 上 (創元推理文庫)

護りと裏切り 上 (創元推理文庫)

護りと裏切り 下 (創元推理文庫)

護りと裏切り 下 (創元推理文庫)

 シリーズ第三作。だが『見知らぬ顔』と『災いの黒衣』を呼んだのははるか昔。面白く読んだ記憶はあるものの、細かい部分はもう覚えていない。主人公達の設定すら忘れかけていた。大丈夫かな……と思いつつも手に取ったが、とても面白かった。
 ヘスターは相変わらず看護婦のままなのだが、前巻でモンクは警官をやめて、私立探偵に転職している。法廷部分が物語の中でも、謎解きの中でも、大きな比重を占めているため、モンクよりも弁護士ラスボーンの方が目立っている。
 カーライアン将軍が、甲冑の鉾槍に胸を突かれて死亡した。逮捕されたのは、将軍の妻アレクサンドラ。夫の不倫を疑い、嫉妬に狂い、配偶者を手にかけたという。
 アレクサンドラ本人は夫殺しを認めているが、ヘスターやモンクから見れば、なにかしら不自然なところがあった。将軍はいかにも軍人らしい性格で、浮いたところはなく、また夫妻の間には一男一女があり、情熱的な愛情はないにせよ、落ち着いた家庭を営んでいると思われていたのに。本当にアレクサンドラが犯人なのか。アレクサンドラは誰かをかばっているのではないだろうか。
 アレクサンドラの義妹の依頼で、ヘスター、モンク、ラスボーンは調査を始める。このままでは、アレクサンドラは間違いなく絞首刑になる。
 法廷場面は圧巻。裁判の流れそのものも感動的なのだが、ミステリとしては、ある登場人物に関して「黒なのか白なのか」という最後の最後まで明かさない、筆者の焦らしのテクニックに唸る。
 時代ミステリの傑作。
 ぜひとも翻訳ミステリーシンジケート(http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/)で紹介されている、未訳のシリーズも訳してほしいものである。


シリーズ第四作『A Sudden, Fearful Death』
http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20101019/1287414438

シリーズ第五作『The Sins of the Wolf』
http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20110913/1315866073

シリーズ第六作『Cain His Brother』
http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20120119/1326928490

シリーズ第七作『Weighed in the Balance』
http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20120925/1348527754

見知らぬ顔 (創元推理文庫)

見知らぬ顔 (創元推理文庫)

災いの黒衣 (創元推理文庫)

災いの黒衣 (創元推理文庫)