金色の魔女と闇の女王/スーザン・キャロル
- 作者: スーザン・キャロル,富永和子
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2012/06/20
- メディア: 文庫
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「セント・レジャー一族」三部作がなかなか面白かったスーザン・キャロル。今回の「ダーク・クイーン」シリーズはさらに面白く、六百ページを超える長さが気にならないほどだ。
ヒストリカルロマンスで、時代設定が十六世紀だと、スコットランドや、エリザベス女王の統治するイングランドの宮廷が舞台となることが多いのだが、この「ダーク・クイーン」シリーズは珍しくフランスが舞台である。当然ながら宮廷絡みの陰謀も、フランス宮廷のものであり、タイトルにあるダーク・クイーンとは、実在の人物カトリーヌ・ド・メディシスである。
不思議な力を持つ゛大地の娘゛が治める島、フェール島。両親を失い、二人の妹と暮らすアリアンヌのもとに、ルナール伯爵が求婚に現れる。指輪を渡し、この指輪を使えば、自分は必ずマリアンヌの元へと現れる、だが三度使ったのちは、自分と結婚してほしいと。彼を追い払うためにとりあえず指輪を受け取ったアリアンヌだが、島の乙女が一人の傷ついた青年を助けたところから、三姉妹、そして島の女達に次々と困難がふりかかる。
魔女狩りを遂行しようとする狂信的な男達の上陸、フランスを支配する王太后カトリーヌの残忍な陰謀。
力を合わせて困難を乗り越えるたび、アリアンヌとルナールの恋は深まっていく。しかしルナールは、アリアンヌに……読者にも……ある重大な事実を隠していた(これには結構驚いた)
様々な立場の人間、様々な思想を持つ人間同士の関係が絡み合い、骨太のドラマを描き出している。
ヒロインやその二人の妹、もヒーローも魅力的だが、彼らの魅力をさらに引き立てているのが敵役カトリーヌ・ド・メディシスである。
宮廷の陰謀ものやスパイもののヒストリカルロマンスの中で、ヒロインがヒーローの足を引っ張ったり、凄い凄いと言われている敵が大したことがないとがっかりしたりするが、作品ではそんなことはない。
カトリーヌもまた強い力を持つ゛大地の娘゛で、知力と意志の強さと邪悪さを持ち合わせた堂々たる悪女だ。かつては三姉妹の母親の親友であり、敵対して別れたとは言え、親友の娘達である三姉妹に複雑な感情を抱いている。
ちょっとしたネタバレになってしまうのだが、史実でカトリーヌが引き起こしたとある大犯罪が作中でもしっかりと出てくるので、血生臭い話を読みたくない人は要注意だ。
力作。次の舞台はパリとのこと。ぜひ二巻もこのレベルの作品を!
- 作者: スーザン・キャロル,富永和子
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