FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ジョーズ/スティーヴン・スピルバーグ監督

 長い間、多くの映画や小説に触れ続けていると、なかには「完璧」としか表現できない作品に出くわすことがある。ホラー映画としては、トビー・フーパー監督『悪魔のいけにえ』(http://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/20110308)がそうだった。そして、この映画もまた。
 「ホラー映画の中で、アニマル・パニックものってあんまり見たことがないな」と感じ、見ることにした作品だった。実際には、ホラーの要素も含む海洋冒険映画だった。そして、これまでに見てきた何百、あるいは千を越えるかもしれない映画の中で、もっとも面白い映画の一つだった。二時間を越える長さなのだが、それをさっぱり感じさせない。
 そして、この映画を撮ったとき、スピルバーグはまだ若く、二十七歳だった。なんと二十七歳!
 夏の、平和な海水浴場に、人食い鮫が現れた。しかし行政側は、もっとも町の利益が得られる季節であることを理由に、調査や閉鎖などを避け、そのため死傷者は増えた。これ以上の鮫による被害を防ぐため、町にやってきたばかりの警察署長ブロディ、海洋学者のフーパー、元軍人で漁師のクイント、個性も得意分野も異なる三人はジョーズを狩るため、船を出した。
 当方は、映画を語るとき、ホラー映画で物音や音声が巧みに使われているとき以外、ほとんど気にすることはない。しかし、この音楽……鮫が現れ、近づいてくるときの音楽は、いつまでも耳の底に残って忘れられそうにない。思わず口ずさんでみたくなるようなメロディで、現在に至るまで日本のバラエティ番組などで「近付く危険」を示すフレーズとして使われている。
 個性が異なる登場人物達、その関係の変化、なかなか姿を現さない化け物に、衝撃的な結末……どこを切り取っても最高だ。軍人時代のクイントのエピソードも強く心に残る。
 久々にこの言葉を使う。大傑作。