FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

この声が届く先/S・J・ローザン

この声が届く先 (創元推理文庫)

この声が届く先 (創元推理文庫)

 S・J・ローザンが凄い。いい意味で凄い。あたかもなにかに(ミステリの神様?)に憑かれたかのようだ。
 ビルの語りの『冬そして夜』、リディアの語りの『シャンハイ・ムーン』という、単にS・J・ローザンの作家上でのキャリアに留まらず、私立探偵を主役に据えたミステリ小説の歴史の上に名前が残りそうな傑作を二作も立て続けに執筆したのち、これまでとはまるで変った作風を繰り出してくる。
 今度の語り手はビル。相棒のリディアは……冒頭は、なんと誘拐された状態で、電話の向こうから声だけ出演する。
 疾風怒涛の追跡&捜索&逃亡劇である。前述の通り、リディアが誘拐された。タイムリミットは十二時間。ビルは犯人の出すヒント、リディアが犯人に分からないように出すヒントを元に、リディアの親戚や友の力を借りつつ、彼女を探す。しかもその間に殺人犯の疑いをかけられて警察に追われ、同じ理由で売春組織の元締めにも追われる。
 『冬そして夜』、『シャンハイ・ムーン』ほどの重厚さはないが、その分すいすいとページをめくることができる。
 良かった!
 こうなれば、この作者のスタンドアローン型(単発)作品も読んでみたい。東京創元社さん、ぜひ。

冬そして夜 (創元推理文庫)

冬そして夜 (創元推理文庫)

シャンハイ・ムーン (創元推理文庫)

シャンハイ・ムーン (創元推理文庫)

↑二冊とも傑作!