名門校殺人のルール/エリザベス・ジョージ
- 作者: エリザベスジョージ,Elizabeth George,小菅正夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1995/12
- メディア: 文庫
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十年ほど前は、大嫌いで読めなかったエリザベス・ジョージ。大嫌いだった理由は、主要登場人物の多くが貴族階級に所属しており、彼らの言動から特権意識が鼻もちならないほど臭ってくることと、作者がイギリスの貴族階級とその地位にある人々を素晴らしいと思っていることが、行間から漂ってくるからだ(ちなみにエリザベス・ジョージは生粋のアメリカ人)。ドロシー・L・セイヤーズのピーター・ウィムジィ卿は大好きだし、マーサ・グライムズのややこしい名前のパブシリーズの登場人物……やはり貴族の登場率多し……はまったく平気だが、このエリザベス・ジョージのみは受け付けなかった。
しかし、『名門校殺人のルール』は「話の面白さ」が「登場人物が嫌い」を上回った例である。
よくできた学園ミステリだ。良家の子女のみが入学を許される全寮制私立校ブレッドガー・チェンバーズ。この学園で一人の少年が失踪し、のちに拷問を受けた死体で発見された。トマス・リンリー警部(貴族)は、部下のバーバラ・ハヴァーズ巡査部長(庶民)をつれて乗り込むが、学園の生徒たちは大人には理解できぬ特定の掟に縛られていた。
トマス・リンリーものの第三作。痛ましい話だが、謎解きの面白さあり。